「さらに拓く」ためのestieのエンジニアリング

こんにちは、estieの取締役CTOを務めている岩成(Nari)です。今回estieはシリーズAで10億円の資金調達を行いましたが、この記事では、なぜそのようなご期待をいただけているのか、一技術者、そしてプロダクト開発の視点からお話をさせていただきます。

estieは「部門」という言葉が日常業務ではほとんど使われないくらい壁がない組織で、だれもが顧客価値につながるビジネス貢献を目指しています。事業やビジネスについては代表の平井の記事やビジネス面を見ている束原の記事に譲って、ここではプロダクトマネージャやソフトウェアエンジニア、デザイナ、QAエンジニアなどを含むプロダクト部門にフォーカスした内容をお伝えできたらと思います。

estieのPurposeとプロダクト部門

estieは、Missionではなく「産業の真価を、さらに拓く。」というPurposeを掲げている会社です。

estieはオフィス不動産を扱う会社ですが、不動産に限らず、各産業の現在の形は、その時その時の最善手の積み重ねであり、尊重されるべきものであるとestieは考えています。そして、その積み重ねによりたどり着いた地点のさらに先を、estieならユーザと一緒に開拓できるというのがこのPurposeに現れています。

不特定多数向けのtoCと比較をすると、toBプロダクト開発では特定のユーザへ定期的なヒアリングをすることもあり、ユーザは非常に身近な存在です。例えば、新しい機能を提供したときに「○○会社の□□さんがめっちゃ喜んでいたよ!」とバイネームで共有できる楽しさがあります。

また、業界に深く刺していくバーティカルSaaSという形態では、ユーザが最もドメイン知識を持っており、その声は非常に貴重なもので学びが多くあります。プロダクト部門が目指すのは、その声を集めて仮説検証を繰り返しながら、まだ世の中に無いものをつくる発想力とテクノロジーによって、ユーザに「え、そんなことできるの?」という良いサプライズを提供することで、真価を「さらに拓く」ことです。

estieがシェアを急拡大している理由はまさにここにあります。

つくってきたもの

estieは、大きく分けると「オフィス探しのestie」と「オフィス賃貸業向けデータプラットフォームのestie pro」の2つのサービスを提供しています。まずこの2つを簡単に紹介します。

オフィス探しのestie

検索結果画面(未登録でも検索できます)

estieは、「オフィス探しをシンプルに。」を掲げ、オフィスを探すテナントとオフィスを紹介する仲介会社をつなぐ賃貸オフィスのマッチングサービスのestie(会社名と同じであるため、この記事ではこれ以降estie.jpと呼びます)からスタートしています。estie自らが仲介業をするわけではなく、複数の仲介会社と提携する形でこのサービスを運営することで、オフィスを探すテナントは多様な提案をもらえるのが売りです。

また、集めたデータを活用することで、おすすめのオフィスを提示したり、賃料がわからないオフィス募集情報でも賃料を推定して提示したりしています。

オフィス賃貸業向けデータプラットフォームのestie pro

千代田区のオフィス募集情報を検索

祖業のestie.jpは、「オフィスを借りたい」といういわゆるデマンドサイドを担うサービスですが、創業から1年後に提供を始め、昨年のリニューアル後に急成長を遂げているのがオフィスを貸す貸主や仲介会社などのサプライサイドをサポートするestie proです。

住宅を探すこととオフィスを探すことの大きな違いの1つは、オフィス募集では賃料が「応相談」などと記載されていて公開されていないことですが、実は競合他社の賃料設定がわからないのは貸主も同じです。各社がそれぞれの方法でオフィス募集の市場調査を行っており、情報は口頭や紙、PDFなどでやり取りされているのが現状です。

賃貸業務においては、間に入るビルの管理会社や仲介会社にこのような賃料を含む情報が集まりますが、estieはそれらの会社と提携して独自にデータを集めることで、オフィス募集の市場調査が手軽でかつリアルタイムに行えるようなサービスを提供しています。また、単にデータを提示するだけでなく、どのように分析を行えばよいのかまで深く踏み込むことで価値提供を行っています。

その他、ゼンリン社などとの提携により、どのビルにどのようなテナントがいつからいつまでいるのか、そのテナントはどのような企業なのかといったestieのみが持つデータの組み合わせ・分析方法を提供することで、オフィスの営業活動への活用などオフィス賃貸業務を広くサポートする仕組みを作り上げています。

検索結果の分析により市場の状況を把握し今まで以上に高度な業務が行える

2つのサービスを支えるデータパイプライン

この2つのプロダクトを支えるのが、提携する多様なデータソースからの情報を集約し、理想的なデータを構築するデータパイプラインです。2つのサービスにもユーザのニーズを満たすために深いドメイン知識が必要ですが、このデータパイプラインが目指すのは最高の不動産データベースであり、常に学びを得ながら作っては壊しを繰り返し改善を行っています。

ドメイン知識の例としては、オフィスの募集データを見ていると、世の中には中2階というものが思ったよりも多いことがわかって階数は整数ではない(中2階=1.5階)と学んだり、壁を壊して2つの区画をくっつけることができるために「区画」という最小単位を作れないということに気づいたりと、頭を悩ますような面白い課題と日々格闘しています。

複数の質が制御できないデータソースを管理し顧客に毎日価値を届けるデータパイプライン

また、不動産という伝統産業におけるデータは以下のような根深い課題をいくつも抱えています。

  • 住所は歴史のある複雑なシステムで、同じ住所に複数のビルが建ったり、郵便番号が同じでも都道府県をまたいだりする
  • 取引のある数百社と口頭や紙面、PDFのやり取りによる情報交換を行うために各社のデータベースには手入力による間違いが多く存在する
  • 複数のデータソースが同じ募集の情報を少しずつ異なる構造で保持し、同じ情報でも表記ゆれ(ビル vs. ビルディングなど)が発生するため様々な場面で名寄せが必要
  • 各社のデータベースは基本的に最新に上書きをしていく仕組みのため、過去の情報を遡るには紙面などを取り出して見る必要がある

このようなデータを、適切なアルゴリズムの構築や、全社的にoperational excellenceを構築する内部ツールの開発などを通して整えてきたのが今のestieの資産です。これにより、「街づくり」を担う不動産会社が日本で初めて統合的かつヒストリカルなデータベースを持つことが可能になったことがestieがシェアを伸ばし、今回の大きな資金調達につながった1つの理由です。

これからのプロダクト開発

このような基盤を整えるプロダクト開発を行い、それによって少しずつ顧客からの信頼を獲得してきたestieですが、資金調達を行えたのは「これまで」の実績だけでなく「これから」に期待していただいているからです。その内容について少し頭出しをします。

業界を一歩前に進めるプロダクト開発

上述した2つのサービスとそれを支えるデータパイプラインをこれからさらに成長させていくことは、基盤が整ったからこそできることが多く、例えば情報検索や分析の速度・質改善を行ったり、大量のデータを処理するためのさらなる技術的挑戦が必要となったりします。

また、オフィス賃貸業に関わるユーザと一言で言ってもさらに細分化でき、ビルを建てるデベロッパーに始まって、ビルの管理会社、仲介会社、不動産ファンドなど多様です。それぞれのユーザセグメントごとに求める機能やデータが異なり、これからさらに価値提供をするためには、それぞれのニーズを捉え、ドメイン知識を反映したプロダクト開発が必要となってきます。

多様なユーザのドメイン知識をいかに吸収するか、学んだ経験をプロダクトに正確に反映するためにどのようなシステム設計をするかなど、フレームワークの選定から多くのことが待っています。

データサイエンスチームの立ち上げとデータ活用

estie.jpでのおすすめ物件のレコメンド機能や、世の中に出ていない賃料情報を活用した賃料予測モデルなど、すでに取り組み始めている機械学習の精度向上はチャレンジングな課題です。賃料予測モデルを確立できれば、業界にまだない指標を作ることにつながり、大きなインパクトが残せます。

また、estieが不動産データベースを構築する過程で蓄積してきているデータには、さらに大きな価値が眠っており、各プロダクトでデータサイエンティストが活躍する場面が少しずつ見えてきています。

このようなデータの活用を主導するチームを立ち上げていきます。

マルチプロダクトをつなぐアーキテクチャ構想

そして、平井の記事にもあるマルチプロダクト戦略が将来の企業価値を跳ねさせるための肝となると考えています。

estieが作るプロダクトは、現在仕込んでいるものや将来作るものも含めて、プロダクト間にシナジーのあるものです。これは「3つのプロダクトで3倍の価値をつくる」のではなく、「3つのプロダクトで10倍、100倍の価値をつくる」を目指しているからです。しかし、言うは易し行うは難しで、同じ「ビル」がそれぞれのプロダクトで異なる意味を持ちえますし、うまくつながるように設計しなければその目標には到達できません。

新規プロダクト開発はつなぐ部分を考慮しながらはじめており、今まさに「どうつなぐか」にフォーカスして将来のプロダクト群をまとめた「estie pro」という1プロダクトを作る設計議論を始めています。このつなぐ部分では、横串のチームを作ることだけでなく、つなぐことに特化したチームを構成しようと考えています。

一緒に「産業の真価を、さらに拓く。」チームをつくりましょう!

まだまだ始まったばかりのestieですが、技術をしっかりと強みにするプロダクト部門を少しずつ構築し、謙虚に学び続けながらも力強いメンバーが集まってきています。不動産という伝統産業に挑戦し、技術力を持って未知を楽しみたい方は、ぜひプロダクト開発を一緒に行っていくチームメンバーになってください!

シリーズAの調達を経て、上場に向けて、そして上場後も大きく企業価値を伸ばし続けるプロダクト部門を構築するために、技術者がさらに楽しめる環境づくりなど、複数のプロジェクトが社内で動き始めています。新しいことを学び続けたい方、技術で事業にインパクトを残したい方、チームで大きなことを成し遂げたい方、全社を横断的につなぐ仕事がしたい方、技術コミュニティに貢献したい方など、ぜひお話の機会をいただけると幸いです!

TwitterのDMやカジュアル面談などお気軽にご連絡ください!

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オンラインイベントのご案内

estie(エスティ)は2022年1月12日、約10億円のシリーズA資金調達を発表いたしました。調達した資金を活用して、商業用不動産業界のデジタルトランスフォーメーションをより加速すべく、「estie pro」を拡張するマルチプロダクト戦略を展開。これを支えるべく、組織規模を1年で2倍以上に拡張させる計画を発表いたしました。

今回は、プロダクト部門の責任者であるCTO岩成とオペレーション(ビジネス)部門の責任者である束原の2名がパネルディスカッション形式で対話をし、シリーズAまでのスタートアップ経営の面白さ・難しさ、今後のプロダクト戦略・組織戦略について話をします。

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